「車のエンジンがかからないの」(長文注意)
先日、仲間の行政書士の先生から「久しぶりに乗った車のエンジンがかからなくなった」という電話が来た。
もう少し話を聞いてみるとこのような状況だった。
結構長い間乗っていなかった車で、実家から(先生の)事務所まで走ってきたが、再度エンジンをかけようとしてもかからなくなっていた。
バッテリーは正常で、セルモーターも普通に回る。燃料計は真ん中よりも少し下を指しており、ガス欠ではない。
既に別の知り合いにこの話をしており、原因は燃料ポンプの故障だろう。とのこと。
私もさっきのお話からこれを疑っていたが、どうして燃料ポンプが「突然死」したか分からない。
そこでエンジンがかからない原因が本当に燃料ポンプ不良なのかどうかを確定する必要がある。
そのためには、燃料ポンプに来ている配線に電気が来ているかどうかを調べなければならない。電気が来ていれば燃料ポンプの不良が確定、もしも来ていなかったら別なところに原因があるということになる。
先生は電気が来ているか確かめるためのテスターをもっていないとのこと。
私はデジタルとアナログのテスターをもっているので、それを調べて欲しいということだった。
調べる方法は、自動車本体のカプラー(コネクター)と燃料ポンプのカプラーを外して、自動車本体側にテスターを当てて、キーをまわしてみて、その際電気が来ていれば燃料ポンプの故障。そうでなければそれ以外の故障ということになる。
先生は私に「修理してまた走れるようにする」ことまでは求めていなかった。燃料ポンプが壊れているのさえ確定することが出来れば、燃料ポンプを手に入れてきて直すことが出来る。
このチェックを怠って燃料ポンプを買ってしまうと、「燃料ポンプを新しいのに変えたのになおエンジンがかからない」(本当は別なところが故障しているから)ということになり、燃料ポンプが無駄になる。
なお、この車は20年近く前のホンダの軽自動車で、走行距離はそれほどでもなく、外見は大変きれいである。
ところで「車のエンジンがかからない」と聞いた際に、2chで有名なコピペを思い出した。
それを以下に示す。
522 :おさかなくわえた名無しさん:2008/08/27(水) 13:20:31 ID:W+wGIGjq
女『車のエンジンがかからないの…』
男『あらら?バッテリーかな?ライトは点く?』
女『昨日まではちゃんと動いてたのに。なんでいきなり動かなくなっちゃうんだろう。』
男『トラブルって怖いよね。で、バッテリーかどうか知りたいんだけどライトは点く?』
女『今日は○○まで行かなきゃならないから車使えないと困るのに』
男『それは困ったね。どう?ライトは点く?』
女『前に乗ってた車はこんな事無かったのに。こんなのに買い替えなきゃよかった。』
男『…ライトは点く?点かない?』
女『○時に約束だからまだ時間あるけどこのままじゃ困る。』
男『そうだね。で、ライトはどうかな?点くかな?』
女『え?ごめんよく聞こえなかった』
男『あ、えーと、、ライトは点くかな?』
女『何で?』
523 :続き:2008/08/27(水) 13:21:37 ID:W+wGIGjq
男『あ、えーと、エンジン掛からないんだよね?バッテリーがあがってるかも知れないから』
女『何の?』
男『え?』
女『ん?』
男『車のバッテリーがあがってるかどうか知りたいから、ライト点けてみてくれないかな?』
女『別にいいけど。でもバッテリーあがってたらライト点かないよね?』
男『いや、だから。それを知りたいからライト点けてみて欲しいんだけど。』
女『もしかしてちょっと怒ってる?』
男『いや別に怒ってはないけど?』
女『怒ってるじゃん。何で怒ってるの?』
男『だから怒ってないです』
女『何か悪いこと言いました?言ってくれれば謝りますけど?』
男『大丈夫だから。怒ってないから。大丈夫、大丈夫だから』
女『何が大丈夫なの?』
男『バッテリーの話だったよね?』
女『車でしょ?』
男『ああそう車の話だった』
女『もう、男って人の話聞かないんだから』
男『ごめん、ごめん。で、ライト点く?』
女『やっぱ怒ってんじゃん』
男『怒ってないってば』
女『絶対怒ってる。何カリカリしてるの? 人が大変な時に!』
男『いや、俺はただライトが付くかどうかを…』
女『話を逸らさないで! ライトがどうこうじゃなくて今あなたの話をしてるの!』
以上
このコピペは各所に転載されていて、そこで内容について、紹介、議論がされていたりする。
どこの議論でもだいたいこのような見解が出ている。
男性はこの車の故障状況を診断し、エンジンがかかるようにしようとしている一方で、
女性は「あなた私を迎えにきてよ」と暗黙のうちに要求している。
だからこのようなちぐはぐなやり取りになっていると。
私は、男性の方の故障診断順序が少しおかしい(本当はキーをまわしてセルが回るかどうかと、どういう状況でエンジンがかからなくなったかを真っ先に聞くべきで、これの成否でその後の故障箇所診断の方向性が大きく変わる)のが気になった。
が、それ以上に気になったというか問題なのは女性側の態度である。
迎えに来て欲しいのであれば、明確にそうお願いすればいいのである。実際男性が迎えにいけるかどうかは別として。
先生がこのような女性みたいな人だったら、冒頭の状況は何一つ把握できなかっただろう。というか、故障診断そのものを拒否する。(引用コピペ文内の女性側発言で唯一状況把握に使えそうなのが赤字で示した「昨日まではちゃんと動いてたのに。」だけというのは本当にあきれてものが言えない)
車は故障状態のまま先生の事務所に停めておけるとのことなので、後日調査に行くことにした。
そして、後日。
持っていく物はテスターだけでよいように思える。しかし、カプラーに手が届きにくいという話だったので、必要であれば周りを分解できるように私の「バイク整備工具セット」(重量15kgくらい)をもっていくことにした。
この車のエンジンと燃料タンクははミッドシップ型で後ろにあり、燃料ポンプは燃料タンクのすぐ上にあった(四輪では一般的な方式)
メンテナンス用のゴムふたを外すと燃料ポンプとカプラーが見えるようになるが、カプラーに指が入りにくくて困っていたとの事だった。
細めのマイナスドライバーなどでこじってカプラーを外すことが出来た。
カプラーにテスターを接続してキーをまわしてそれで電気が来ていれば、燃料ポンプ不良が確定してこの件は終了。
しかし、電気は来ていなかった。となると、他の場所に原因があるということになる。
可能性としては大まかに
1、ECU(エンジン制御用コンピュータ)不良
2、配線不良
3、ヒューズ切れ
が考えられる。
1のECUの指令で燃料ポンプ起動・停止の信号が出ている。しかし、先生によるとこの車のECUは前に交換したことがあるとのこと。
2の配線不良の場合、単なるカプラー抜けから経年劣化による配線切れなどいろいろあり、問題箇所の発見が極めて難しい。
3のヒューズ切れの場合、そもそもなんでヒューズ切れしたのかを突き止めないと、切れたヒューズを交換してもまたヒューズが切れることになる。
まず、ヒューズボックスをみることにした。四輪車のヒューズは電気系統ごとに別れており、大体6から12系統くらいある。例えば、「ライト」「ウインカー」「ランプ(メーター灯や室内灯)」「I/G(イグニッション=エンジン点火系統)」「ECU」「ABS」「パワーウインドウ」「ACC(アクセサリ=エンジンキーONで電気が取れるシガーライター)」「エアコン」「ワイパー」などである。
ここで点火に関係ありそうなのはECUとI/Gくらいである。これだけはしっかり確認したが問題なかった。あとで分かったことだが「ランプ」のヒューズが切れていた。現段階では切れていたところでこれは関係ないと判断しただろう。
次に配線不良とECUの初期不良(こげた臭いとかしているかもしれない)を確かめるのに
座席よりも後ろの部分の内装や鉄板類を二人で分解しまくった。
先生は「こんなに分解したことないし、元に戻せる自信が無い」と心配していたので、
私は「全部覚えているから大丈夫」と返しておいた。
出来る範囲の目視確認では配線も正常のように見えた。ECUのようなコンピュータ系の近くでテスターを当てるのは避けた。そのせいでコンピュータが壊れる可能性があるからである。
私がいろいろなチェックをしている間、先生がネット上のこの車の整備日記のようなものを次々と見つけて印刷してもってきてくれたが、今回の件で役に立ちそうなのはないようだった。
少し休憩して、水飲んでから再度印刷された内容をチェックしてみた。
次のような記載があった
「燃料ポンプが固着すると「ランプ」のヒューズが飛ぶ」
長期間乗らなかった車なので、ガソリンが劣化する→燃料ポンプが固着する→ランプのヒューズが飛ぶ→燃料ポンプのところに電気が来なくなり、ポンプが作動しない。
ということがありうる。
早速「ランプ」のヒューズをチェックした。ヒューズは切れていた。このとき初めて知った。さっきの情報が無かったらこのヒューズ切れは重要視しなかっただろう。
新品のヒューズを取り付け、燃料ポンプまで電気が来ているかチェックしてみた。
来ていた。
燃料ポンプのカプラーをつけて再度セルを回してみた。エンジンはかからない。
ポンプが正常ならキーをまわしたときにポンプから動作音がするとのこと。私はここに来てからそれを一度も聞いていない。
もう一度休憩して、この車に何が起きたのか推理してみた。
1、先生が久しぶりにこの車を出して、事務所まで走ってきたときはちゃんと走ってこれた(燃料ポンプは動いていた)でも、そこから再度エンジンかけて走ろうとしたときにエンジンがかからなくなっていた。
2、「燃料ポンプが固着すると「ランプ」のヒューズが飛ぶ」
3、私のバイク乗りとしての経験上、長い間バイク乗らないでいると燃料系の狭い部分が燃料の劣化によりふさがったり固着することがある。
状況が読めてきた。
先生が久しぶりにこの車を動かした際に、燃料が劣化しており燃料ポンプが固着しかけていた。
固着しかけていたポンプを動かし続けたために「ランプ」のヒューズが切れる寸前までいっていた。…が、少なくとも事務所までは持った。
再度エンジンをかけたときに「ランプ」のヒューズに通電した瞬間にヒューズが切れた。寿命寸前の電球が電気をつけた瞬間に切れるのと同じ理由である。
ヒューズが切れたから燃料ポンプが動かなくなり、エンジンがかからなくなった。
ということではないのだろうか?
しかし、ヒューズを交換して、ポンプまで電気が来るようになってもポンプが動かない、されとて再度ヒューズが切れないのもおかしな話である。
まぁ、この段階までくれば「ポンプまで電気が来ている」状況にはなっているわけだし、あとは燃料ポンプ交換すれば大丈夫でしょう。
……
……これ、もしかしてポンプ直せるんじゃないか?とふと思った。
このポンプ、あとは新品にしろ中古品にしろ、良品に交換するだけである。
そうしたらこのポンプは捨てられることになる。どうせ捨てられるのなら完全に壊れるかもしれないけど…。
先生に固着の旨を話し、「ポンプのあたりを叩いてショックを与えれば固着が直るかもしれない。直らなければこのポンプは捨てるだけなんで……賭けてみますか?」
私はプラスチックハンマー(ハンマーの頭部分だけがプラスチックで出来ているハンマー)でポンプの上側を何度か強めに叩いてみた。
再度私がキーをひねる。車は何事も無かったように息を吹き返した。
特にエンジンから異音もみられない。アクセル踏めば安定してエンジン回転があがる。
正直言って自分でもこんなにあっさり直るとは思わなかった。
結果論で言えば、「ランプ」のヒューズを交換してメンテナンス用ゴムふたを外してプラスチックハンマーで叩いてセルを回せば直ったということになる。
修理に3分もかからないし、要する費用はヒューズ1個だけである。
一見「簡単な仕事」に思えるが、それは結果だけみたらそう思うだけで、実際は容易ではないのは、ここまで長文で書いたとおり。
このブログ、私が車庫証明やっている関係上、自動車ディーラーさんが読んでくださっていると思う。
例えば、これと同じような故障を直して、「エンジンかかるようになりました。交換した部品はこれ(切れたヒューズ)です。工賃は3万円です」なんてこと言って、お客さんから「高すぎる!」と言われたプロの方もいらっしゃるのではないか。
前述したとおり「エンジンがかからないの」で考えられる原因というのはいくらでもある。それを原因を特定して適切な修理をするというのは時間がかかるし経験と技術も必要である。プロに対して支払うお金はこれに対する対償だ…と考えられる人間はきっと多くないと思う。
それどころか「エンジンがかからないの」コピペのようなお客さんに苦労させられているプロの方も多いのでないのだろうか。
この後、覚えていたとおりに部品を元に戻し、試運転を兼ねて一緒に昼食をとりに行った。
昼食後の再始動も問題なく出来、特に異常を感じることも無く事務所へ戻ることが出来た。
数日たった今も、調子が良いとのことである。

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もう少し話を聞いてみるとこのような状況だった。
結構長い間乗っていなかった車で、実家から(先生の)事務所まで走ってきたが、再度エンジンをかけようとしてもかからなくなっていた。
バッテリーは正常で、セルモーターも普通に回る。燃料計は真ん中よりも少し下を指しており、ガス欠ではない。
既に別の知り合いにこの話をしており、原因は燃料ポンプの故障だろう。とのこと。
私もさっきのお話からこれを疑っていたが、どうして燃料ポンプが「突然死」したか分からない。
そこでエンジンがかからない原因が本当に燃料ポンプ不良なのかどうかを確定する必要がある。
そのためには、燃料ポンプに来ている配線に電気が来ているかどうかを調べなければならない。電気が来ていれば燃料ポンプの不良が確定、もしも来ていなかったら別なところに原因があるということになる。
先生は電気が来ているか確かめるためのテスターをもっていないとのこと。
私はデジタルとアナログのテスターをもっているので、それを調べて欲しいということだった。
調べる方法は、自動車本体のカプラー(コネクター)と燃料ポンプのカプラーを外して、自動車本体側にテスターを当てて、キーをまわしてみて、その際電気が来ていれば燃料ポンプの故障。そうでなければそれ以外の故障ということになる。
先生は私に「修理してまた走れるようにする」ことまでは求めていなかった。燃料ポンプが壊れているのさえ確定することが出来れば、燃料ポンプを手に入れてきて直すことが出来る。
このチェックを怠って燃料ポンプを買ってしまうと、「燃料ポンプを新しいのに変えたのになおエンジンがかからない」(本当は別なところが故障しているから)ということになり、燃料ポンプが無駄になる。
なお、この車は20年近く前のホンダの軽自動車で、走行距離はそれほどでもなく、外見は大変きれいである。
ところで「車のエンジンがかからない」と聞いた際に、2chで有名なコピペを思い出した。
それを以下に示す。
522 :おさかなくわえた名無しさん:2008/08/27(水) 13:20:31 ID:W+wGIGjq
女『車のエンジンがかからないの…』
男『あらら?バッテリーかな?ライトは点く?』
女『昨日まではちゃんと動いてたのに。なんでいきなり動かなくなっちゃうんだろう。』
男『トラブルって怖いよね。で、バッテリーかどうか知りたいんだけどライトは点く?』
女『今日は○○まで行かなきゃならないから車使えないと困るのに』
男『それは困ったね。どう?ライトは点く?』
女『前に乗ってた車はこんな事無かったのに。こんなのに買い替えなきゃよかった。』
男『…ライトは点く?点かない?』
女『○時に約束だからまだ時間あるけどこのままじゃ困る。』
男『そうだね。で、ライトはどうかな?点くかな?』
女『え?ごめんよく聞こえなかった』
男『あ、えーと、、ライトは点くかな?』
女『何で?』
523 :続き:2008/08/27(水) 13:21:37 ID:W+wGIGjq
男『あ、えーと、エンジン掛からないんだよね?バッテリーがあがってるかも知れないから』
女『何の?』
男『え?』
女『ん?』
男『車のバッテリーがあがってるかどうか知りたいから、ライト点けてみてくれないかな?』
女『別にいいけど。でもバッテリーあがってたらライト点かないよね?』
男『いや、だから。それを知りたいからライト点けてみて欲しいんだけど。』
女『もしかしてちょっと怒ってる?』
男『いや別に怒ってはないけど?』
女『怒ってるじゃん。何で怒ってるの?』
男『だから怒ってないです』
女『何か悪いこと言いました?言ってくれれば謝りますけど?』
男『大丈夫だから。怒ってないから。大丈夫、大丈夫だから』
女『何が大丈夫なの?』
男『バッテリーの話だったよね?』
女『車でしょ?』
男『ああそう車の話だった』
女『もう、男って人の話聞かないんだから』
男『ごめん、ごめん。で、ライト点く?』
女『やっぱ怒ってんじゃん』
男『怒ってないってば』
女『絶対怒ってる。何カリカリしてるの? 人が大変な時に!』
男『いや、俺はただライトが付くかどうかを…』
女『話を逸らさないで! ライトがどうこうじゃなくて今あなたの話をしてるの!』
以上
このコピペは各所に転載されていて、そこで内容について、紹介、議論がされていたりする。
どこの議論でもだいたいこのような見解が出ている。
男性はこの車の故障状況を診断し、エンジンがかかるようにしようとしている一方で、
女性は「あなた私を迎えにきてよ」と暗黙のうちに要求している。
だからこのようなちぐはぐなやり取りになっていると。
私は、男性の方の故障診断順序が少しおかしい(本当はキーをまわしてセルが回るかどうかと、どういう状況でエンジンがかからなくなったかを真っ先に聞くべきで、これの成否でその後の故障箇所診断の方向性が大きく変わる)のが気になった。
が、それ以上に気になったというか問題なのは女性側の態度である。
迎えに来て欲しいのであれば、明確にそうお願いすればいいのである。実際男性が迎えにいけるかどうかは別として。
先生がこのような女性みたいな人だったら、冒頭の状況は何一つ把握できなかっただろう。というか、故障診断そのものを拒否する。(引用コピペ文内の女性側発言で唯一状況把握に使えそうなのが赤字で示した「昨日まではちゃんと動いてたのに。」だけというのは本当にあきれてものが言えない)
車は故障状態のまま先生の事務所に停めておけるとのことなので、後日調査に行くことにした。
そして、後日。
持っていく物はテスターだけでよいように思える。しかし、カプラーに手が届きにくいという話だったので、必要であれば周りを分解できるように私の「バイク整備工具セット」(重量15kgくらい)をもっていくことにした。
この車のエンジンと燃料タンクははミッドシップ型で後ろにあり、燃料ポンプは燃料タンクのすぐ上にあった(四輪では一般的な方式)
メンテナンス用のゴムふたを外すと燃料ポンプとカプラーが見えるようになるが、カプラーに指が入りにくくて困っていたとの事だった。
細めのマイナスドライバーなどでこじってカプラーを外すことが出来た。
カプラーにテスターを接続してキーをまわしてそれで電気が来ていれば、燃料ポンプ不良が確定してこの件は終了。
しかし、電気は来ていなかった。となると、他の場所に原因があるということになる。
可能性としては大まかに
1、ECU(エンジン制御用コンピュータ)不良
2、配線不良
3、ヒューズ切れ
が考えられる。
1のECUの指令で燃料ポンプ起動・停止の信号が出ている。しかし、先生によるとこの車のECUは前に交換したことがあるとのこと。
2の配線不良の場合、単なるカプラー抜けから経年劣化による配線切れなどいろいろあり、問題箇所の発見が極めて難しい。
3のヒューズ切れの場合、そもそもなんでヒューズ切れしたのかを突き止めないと、切れたヒューズを交換してもまたヒューズが切れることになる。
まず、ヒューズボックスをみることにした。四輪車のヒューズは電気系統ごとに別れており、大体6から12系統くらいある。例えば、「ライト」「ウインカー」「ランプ(メーター灯や室内灯)」「I/G(イグニッション=エンジン点火系統)」「ECU」「ABS」「パワーウインドウ」「ACC(アクセサリ=エンジンキーONで電気が取れるシガーライター)」「エアコン」「ワイパー」などである。
ここで点火に関係ありそうなのはECUとI/Gくらいである。これだけはしっかり確認したが問題なかった。あとで分かったことだが「ランプ」のヒューズが切れていた。現段階では切れていたところでこれは関係ないと判断しただろう。
次に配線不良とECUの初期不良(こげた臭いとかしているかもしれない)を確かめるのに
座席よりも後ろの部分の内装や鉄板類を二人で分解しまくった。
先生は「こんなに分解したことないし、元に戻せる自信が無い」と心配していたので、
私は「全部覚えているから大丈夫」と返しておいた。
出来る範囲の目視確認では配線も正常のように見えた。ECUのようなコンピュータ系の近くでテスターを当てるのは避けた。そのせいでコンピュータが壊れる可能性があるからである。
私がいろいろなチェックをしている間、先生がネット上のこの車の整備日記のようなものを次々と見つけて印刷してもってきてくれたが、今回の件で役に立ちそうなのはないようだった。
少し休憩して、水飲んでから再度印刷された内容をチェックしてみた。
次のような記載があった
「燃料ポンプが固着すると「ランプ」のヒューズが飛ぶ」
長期間乗らなかった車なので、ガソリンが劣化する→燃料ポンプが固着する→ランプのヒューズが飛ぶ→燃料ポンプのところに電気が来なくなり、ポンプが作動しない。
ということがありうる。
早速「ランプ」のヒューズをチェックした。ヒューズは切れていた。このとき初めて知った。さっきの情報が無かったらこのヒューズ切れは重要視しなかっただろう。
新品のヒューズを取り付け、燃料ポンプまで電気が来ているかチェックしてみた。
来ていた。
燃料ポンプのカプラーをつけて再度セルを回してみた。エンジンはかからない。
ポンプが正常ならキーをまわしたときにポンプから動作音がするとのこと。私はここに来てからそれを一度も聞いていない。
もう一度休憩して、この車に何が起きたのか推理してみた。
1、先生が久しぶりにこの車を出して、事務所まで走ってきたときはちゃんと走ってこれた(燃料ポンプは動いていた)でも、そこから再度エンジンかけて走ろうとしたときにエンジンがかからなくなっていた。
2、「燃料ポンプが固着すると「ランプ」のヒューズが飛ぶ」
3、私のバイク乗りとしての経験上、長い間バイク乗らないでいると燃料系の狭い部分が燃料の劣化によりふさがったり固着することがある。
状況が読めてきた。
先生が久しぶりにこの車を動かした際に、燃料が劣化しており燃料ポンプが固着しかけていた。
固着しかけていたポンプを動かし続けたために「ランプ」のヒューズが切れる寸前までいっていた。…が、少なくとも事務所までは持った。
再度エンジンをかけたときに「ランプ」のヒューズに通電した瞬間にヒューズが切れた。寿命寸前の電球が電気をつけた瞬間に切れるのと同じ理由である。
ヒューズが切れたから燃料ポンプが動かなくなり、エンジンがかからなくなった。
ということではないのだろうか?
しかし、ヒューズを交換して、ポンプまで電気が来るようになってもポンプが動かない、されとて再度ヒューズが切れないのもおかしな話である。
まぁ、この段階までくれば「ポンプまで電気が来ている」状況にはなっているわけだし、あとは燃料ポンプ交換すれば大丈夫でしょう。
……
……これ、もしかしてポンプ直せるんじゃないか?とふと思った。
このポンプ、あとは新品にしろ中古品にしろ、良品に交換するだけである。
そうしたらこのポンプは捨てられることになる。どうせ捨てられるのなら完全に壊れるかもしれないけど…。
先生に固着の旨を話し、「ポンプのあたりを叩いてショックを与えれば固着が直るかもしれない。直らなければこのポンプは捨てるだけなんで……賭けてみますか?」
私はプラスチックハンマー(ハンマーの頭部分だけがプラスチックで出来ているハンマー)でポンプの上側を何度か強めに叩いてみた。
再度私がキーをひねる。車は何事も無かったように息を吹き返した。
特にエンジンから異音もみられない。アクセル踏めば安定してエンジン回転があがる。
正直言って自分でもこんなにあっさり直るとは思わなかった。
結果論で言えば、「ランプ」のヒューズを交換してメンテナンス用ゴムふたを外してプラスチックハンマーで叩いてセルを回せば直ったということになる。
修理に3分もかからないし、要する費用はヒューズ1個だけである。
一見「簡単な仕事」に思えるが、それは結果だけみたらそう思うだけで、実際は容易ではないのは、ここまで長文で書いたとおり。
このブログ、私が車庫証明やっている関係上、自動車ディーラーさんが読んでくださっていると思う。
例えば、これと同じような故障を直して、「エンジンかかるようになりました。交換した部品はこれ(切れたヒューズ)です。工賃は3万円です」なんてこと言って、お客さんから「高すぎる!」と言われたプロの方もいらっしゃるのではないか。
前述したとおり「エンジンがかからないの」で考えられる原因というのはいくらでもある。それを原因を特定して適切な修理をするというのは時間がかかるし経験と技術も必要である。プロに対して支払うお金はこれに対する対償だ…と考えられる人間はきっと多くないと思う。
それどころか「エンジンがかからないの」コピペのようなお客さんに苦労させられているプロの方も多いのでないのだろうか。
この後、覚えていたとおりに部品を元に戻し、試運転を兼ねて一緒に昼食をとりに行った。
昼食後の再始動も問題なく出来、特に異常を感じることも無く事務所へ戻ることが出来た。
数日たった今も、調子が良いとのことである。
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